【APS-C編】レンズ焦点距離別の、被写界深度とオススメの使い方を考えてみたよ!
おはようございます。たかぴ(@takapyx)です。
この1記事に張り切りすぎて、ここ数日、全くブログ更新が出来ませんでした・・・。
とても多くの方に見て頂いた下記エントリについてブコメ等でご指摘もあったのですが、まだまだ試験に不十分な点がありました。
そこで、もう一度評価条件を見直して、試験をやり直してみました。 データ量が多すぎて1記事にまとめきれないので、今後、何回かに分けて試験結果をお伝えしていこうと思います。
今回は、使用している方も多いと思われるセンサーサイズAPS-Cのカメラのレンズについて被写界深度(ボケ量)を検証し、僕的にオススメな使い方をまとめてみました。
カメラの使い方に悩んでいる方は、良かったら参考にしてみて下さい。
今回の結果まとめ
毎回恒例、今回も異常に長い記事になると思いますので、先にまとめを残しておきます。忙しい方はここだけ見てもらえればOK、もし暇があれば、下の方も見ていって下さい。
① 23mm (35mm換算 35mm) ⇒ オールマイティーな画角だが、ボケには期待出来ず残念・・・。くっきり写すならf/8.0以上。
② 33mm (35mm換算 50mm) ⇒ ボケを活かすのは難しい。f/16位でくっきり写すのがBetter。
③ 57mm (35mm換算 85mm) ⇒ ポートレート向き。f/5.6が背景が活かせるボケ具合で良い感じ。パンフォーカスは大きく絞り込む必要あり。
④ 70mm (35mm換算 105mm) ⇒ ボケを活かしてf/8.0以下が使いやすい。パンフォーカスはそろそろ厳しい。
⑤ 100mm (35mm換算 150mm) ⇒ f/5.6程度でとろとろボケ。f/22で適度なボケ。ただし、回折ボケには要注意!
⑥ 133mm (35mm換算 200mm) ⇒ 傾向は100mmと同じ。背景がとろけるのはf/8.0以下。f/32で適度なボケが得られるが、回折ボケも酷いので用途はよく考える。
⑦ フルサイズのボケ具合は段違い。パンフォーカスが得意ならAPS-Cも悪くない。
試験解説の前に・・・知っておきたいカメラ予備知識
今回の報告はカメラの専門用語が多くなりますので、ちょっとだけ解説を入れておこうと思います。
カメラに詳しい方はそのまま読み飛ばして頂いて結構です。「APS-C?35mm換算?なにそれ?おいしいの?」って方は、ざっと目を通して貰えると、以下の説明が分かりやすくなると思います。
尚、この辺の説明は、Studio9さんの初心者向き記事や、色々なサイトで詳しく説明されていますので、ここでは簡単な説明にとどめておきます。
①APS-Cって何?
カメラのイメージセンサー部分の大きさ規格の一種です。
デジタルカメラは、このイメージセンサーと呼ばれる部分に、レンズを通して送り込まれた映像を記録します。
一眼レフ初級〜中級機や、ミラーレスカメラの多くがこのサイズのセンサーを使用しています。 一方、一眼レフ上級機や、一部のミラーレス高級機は、フルサイズという大きさ規格のセンサーを使用しています。
センサーサイズが大きいと、画質の向上、ノイズの低減、大きなボケを得やすくなる等の効果がありますが、その反面、値段も跳ね上がっていきます。
②焦点距離って何?
カメラのレンズには、焦点距離〇〇mmという表記があります。 大雑把に言うと、これはそのレンズで撮影出来る範囲が広いか狭いかに関する項目です。
焦点距離が短い程、そのレンズは広い視野を切り取ることが出来ます。また、パースの付き方や、画面の歪みも大きくなっていく傾向にあります。(これが広角レンズと呼ばれるものです。)
一方、焦点距離が長いレンズは、広角レンズとは逆の傾向を持ち、遠くのものを大きく写します。こちらは望遠レンズと呼ばれます。
③(35mm換算)焦点距離って何?
今回の記事を見る上で、是非、理解しておいて欲しい概念です。 実は、同じ焦点距離のレンズを使っても、センサーサイズが異なると、その写り方(画角や、パースの付き方)は全く変わってしまいます。
例えば、フルサイズ機で35mmレンズを使って撮影した写真と同じ画角の写真をAPS-C機で撮ろうと思った場合、レンズは35mmでは無く、23mmのものを使う必要があります。
このときの「23mm」という数値が「焦点距離」、そして、「35mm」という数値が「(35mm換算)焦点距離)」です。
デジタルカメラのセンサーサイズには色々な規格がありますので、センサーサイズの異なるカメラ同士で比較をしたいとき、レンズに記載されている焦点距離では、その写りを比較をする事が出来ません。
このため、同じ条件で写真を比較するための規格(単位)として、35mm換算焦点距離という概念が使われます。
今回の記事でも、35mm換算焦点距離という考え方が多用されているため、覚えておいてもらうと、以下の話が分かりやすくなると思います。
④絞り値って何?
一眼レフやミラーレスは、F値(絞り)と呼ばれる項目を調節することが出来ます。
このF値を調節することで、撮影出来る写真の明るさや、ボケ具合を弄ることが出来ます。
F値が小さい(絞りを開く)ほど、写真のボケは大きくなります。 一方、F値が大きい(絞り込む)ほど、画面全体をくっきりと写すことが出来る様になります。
色々な焦点距離毎に、どの程度の絞り値を使うと良いかを調べてみるのが今回の目的です。
④被写界深度(ボケ具合)は何によって決まる?
カメラのボケ具合を決める要因としては、①イメージセンサーのサイズ、②絞り(F値)、③焦点距離、④被写体と背景間の距離等があり、超大雑把にまとめると、下表の様な関係性があります。
例によって、詳細は割愛しますが、この関係を覚えておくと、以下の評価が、分かりやすくなると思います。
試験に使用した機材、道具
カメラとレンズ
今回は、カメラは数年前に買ったSonyのNEX-5R、レンズは便利ズームのSEL18200LEを使用しています。
SONY ミラーレス一眼 α NEX-5R パワーズームレンズキット E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS付属 ブラック NEX-5RL/B
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ミラーレスはレンズの手持ちが少ないため、このレンズで焦点距離を変化させて評価を行いました。
これはあまり明るいレンズでは無い(F値が小さくならない)ため、大きなボケの評価は今回は十分に出来ていないです・・・。
被写体
前回の評価では、被写体距離1mのデータしか取っていなかったので、今回はモデルのダンボーの数を4体まで増やしました。
勢揃い、やー!
試験方法
① 奥の建物から50mの距離にイメージセンサーが来る様にカメラを設置しました。
② カメラから1m、3m、5m、7mの位置にダンボーを設置しました。
模式図で表すとこんな感じ。
実際の撮影風景です。
③各距離のダンボーにフォーカスを合わせ、1段ずつ絞りながら撮影していきました。また、絞り開放と、最大絞りの場合も撮影しています。
※段・・・カメラ用語で、どれだけカメラが光を取り込めるかの尺度です。ここでは、絞り値を1段ずつ絞る = F値を2.0、2.8、4.0、5.6、8.0、11、16、22、32と大きくするコトと思ってください。
④撮影後はLightroomにて、レンズ補正有り、カメラプロファイル: Strandard、それ以外の調整は無しで現像しました。
試験結果
試験結果を一覧にすると、次の様になりました。
尚、今回の記事では被写体が大きく写って分かりやすいので、被写体距離1mでの比較写真で検証しています。 (相当写真が小さくなって見えづらいと思うので、PCでの確認推奨です。)
焦点距離 | 23mm | 33mm | 57mm | 70mm | 100mm | 133mm |
---|---|---|---|---|---|---|
35mm換算 | 35mm | 50mm | 85mm | 105mm | 150mm | 200mm |
絞り開放 | f/3.5 | f/4.5 | f/5.6 | f/5.6 | f/6.3 | f/6.3 |
最大絞り | f/22 | f/29 | f/36 | f/36 | f/40 | f/40 |
絞り開放 | ||||||
f/4.0 | No Data | No Data | No Data | No Data | No Data | |
f/5.6 | No Data | No Data | ||||
f/8.0 | ||||||
f/11 | ||||||
f/16 | ||||||
f/22 | ||||||
f/32 | No Data | No Data | ||||
最大絞り |
試験結果から見る、焦点距離毎の画角とおすすめ絞り
① 23mm (35mm換算 35mm) ⇒ 画角は使いやすいが、ボケには期待出来ない。くっきり写すならf/8.0以上。
前回のフルサイズの記事では、使いやすい画角とボケのコントロールのしやすさで、オールマイティーな焦点距離として35mmを紹介しましたが、APS-Cではボケには期待出来そうにない結果となりました。
解放で撮っても中途半端にボケるだけですので、暗くて撮影が出来ないという場合以外は、f/8.0まで絞った方がくっきり写って幸せになれそうです。
しかし、折角使いやすい画角なのにボケにくいのは勿体ないですね・・・。 明るいレンズを使えば、もしかしたら評価が変わるかもしれないと思いました。
焦点距離 | 35mm換算 | f/3.5 | f/8.0 |
---|---|---|---|
23mm | 35mm |
② 33mm (35mm換算 50mm) ⇒ オールマイティーな画角だが、ボケには期待出来ず残念・・・。くっきり写すならf/8.0以上。
いわゆる、標準レンズと呼ばれる画角です。巷では、35mm派と50mm派に好みが二分されるそうです・・・。
自分ではこの画角を使ったことがあまり無い為、あまり解説は出来ませんが、人間の視野に近いらしく、上手く使えばオールマイティーに使用出来るオススメ画角らしいです。
しかし、ボケ量については、絞り開放(f/4.5)でも中途半端なのが否めないです。もっと明るいレンズを使えば、キレイなボケが出せるかもしれません。
この焦点距離の場合も、しっかり絞ってパンフォーカスで撮影するのが良さそうです。 パンフォーカスなら、f/16位から全体がくっきり写る様になりました。
焦点距離 | 35mm換算 | f/4.5 | f/16 |
---|---|---|---|
33mm | 50mm |
③ 57mm (35mm換算 85mm) ⇒ ポートレート向き。f/5.6が背景が活かせるボケ方で良い感じ。パンフォーカスは大きく絞り込む必要あり。
中望遠と呼ばれる焦点距離で、ポートレート撮影の鉄板とも言える画角です。 この焦点距離で、ようやく適度な背景ボケが出せるようになってきました。
個人的には、被写体が引き立ち、かつ背景も活かせる適度なボケはこれくらいかなと思います。
パンフォーカスも出来ないワケでは無いですが、相当大きく絞る必要があります。
詳細は後日、記事にしようと思いますが、f/22位からAFでのピント合わせが難しくなる程度の回折ボケが出始めたため、パンフォーカスと回折ボケのどちらを優先するか、トレードオフになりそうです。
焦点距離 | 35mm換算 | f/5.6 | f/32 |
---|---|---|---|
57mm | 85mm |
④ 70mm (35mm換算 105mm) ⇒ ボケを活かしてf/8.0以下が使いやすい。パンフォーカスはそろそろ厳しい。
フルサイズ機の記事では、フィギュア撮り用の焦点距離として紹介しましたが、ポートレート撮影にも向いています。 この焦点距離の場合、f/8.0程度で適度なボケが出せると思います。
一般論として、レンズの性能が最大限に引き出せるのがf/8.0からf/11程度らしいので、APS-Cのカメラの性能を最大限に引き出せるのは、この辺の設定かもしれないです。
尚、最大まで絞っても、50m先にはくっきりピントを合わせる事が出来なかったので、これ以上望遠のレンズではパンフォーカスは期待しない方が良さげです。
焦点距離 | 35mm換算 | f/8.0 | f/32 |
---|---|---|---|
70mm | 105mm |
⑤ 100mm (35mm換算 150mm) ⇒ f/5.6程度でとろけるボケ。f/22で適度なボケ。ただし、回折ボケには要注意!
望遠レンズと呼ばれる焦点距離になります。これ以上の焦点距離はほとんど使ったことがないため、使い方の提案が出来ず、残念。
いよいよ、背景も完全にとろけてしまう様な大きなボケが現れ始めました。 この焦点距離だと、絞り開放でもf/6.3なので十分な検証は出来ていませんが、f/5.6程度まで絞りを開けば、被写体のみにフォーカスした、いわゆる、「一眼レフっぽい」写真が撮れそうです。
f/22程度まで絞り込むと背景が適度にぼけた写真も撮れる様になりますが、ちょっと絞りすぎですので、回折ボケも気になり始めるかもしれません・・・。
焦点距離 | 35mm換算 | f/8.0 | f/22 |
---|---|---|---|
100mm | 150mm |
⑥ 133mm (35mm換算 200mm) ⇒ 傾向は100mmと同じ。背景がとろけるのはf/8.0以下。f/32で適度なボケが得られるが、回折ボケも酷いので用途はよく考える。
試験途中でレンズの角度を変えられなかったため、ダンボーさん、頭のamazonロゴしか写っておりません・・・。
⑤の100mm (35mm換算 150mm)よりも若干ボケが強いですが、傾向に大きな違いはありませんでした。
適度なボケを出そうと思うとf/32まで絞り込む必要がありますが、ここまで絞ると盛大に回折ボケが出始めるため、この焦点距離は大きなボケを出したい時専用と考えた方が良いかもしれないです。
無理矢理絞って使うのであれば用途をよく考え、回折ボケが気にならないサイズでの使用のみに限定した方が良いと思いました。
焦点距離 | 35mm換算 | f/8.0 | f/32 |
---|---|---|---|
133mm | 200mm |
⑦ フルサイズのボケ具合は段違い。パンフォーカスが得意ならAPS-Cも悪くない。
フルサイズのカメラと比較して、センサーサイズの小さいAPS-Cはボケを出すのが苦手です。
そこで、APS-Cでフルサイズの様なボケ方の写真を撮りたい場合どの位のF値が必要になるのか、フルサイズでのボケの発生傾向を元に予想してみました。
広角(35mm)レンズの場合
広角域の23mm (35mm換算35mm)の場合、フルサイズ機と同等の大ボケをAPS-C機で表現しようと思うと、f/1.4というとんでもなく明るいレンズが必要になる予想です。
APS-Cでは難しい「広く写しつつも背景をボケさせる」というコントロールが出来るところが、フルサイズ機の大きなアドバンテージだと感じました。
対するAPS-Cですが、ボケが出しにくい代わりに、画面全体をくっきりパンフォーカスで写すのは得意です。
「ボケなんて生ぬるいこと言ってんじゃねぇ!」という男気のある方には、逆にAPS-Cの方がオススメかもしれません。
APS-C | フルサイズ | |
---|---|---|
ボケ大 | No Data | |
予想: f/1.4 | f/2.0 | |
ボケ適度 | No Data | |
予想: f/2.8 | f/4.0 | |
くっきり | ||
f/8.0 | f/11 |
中望遠(85mm)レンズの場合
焦点距離85mmという中望遠域の場合は、f/5.6もあればAPS-C機でも適度なボケを出す事は可能です。
一方、背景がとろけた大ボケはf/1.4程度まで絞りを開かないと撮れないと予想されるため、現実的には非常に厳しいと思います。
どうしてもAPS-Cで大きなボケを出したいのであれば、100mm(35mm換算150mm)以上の焦点距離のレンズを用意した方が良さそうです。
尚、フルサイズ機はこの焦点域でパンフォーカス撮影をしようと思うと、絞りはf/64程度が必要になる予想です。
こんなレンズがあるかどうかは分かりませんが、もしあったとしても回折ボケが恐ろしいことになりそうですので、フルサイズ機では中望遠より望遠側でのパンフォーカス撮影は考えない方が良さそうです。
APS-C | フルサイズ | |
---|---|---|
ボケ大 | No Data | |
予想: f/1.4 | f/2.0 | |
ボケ適度 | ||
f/5.6 | f/8.0 | |
くっきり | No Data | |
f/32 | 予想: f/64 |
中望遠(105mm)レンズの場合
更に焦点距離が長い35mm換算105mmでは、上記の傾向がより顕著になりました。 ここまで焦点距離が伸びると、APS-Cもフルサイズもボケ無く撮影するのは不可能に近いです。
どうしてもこの焦点距離でのパンフォーカス撮影が必要であれば、もっとセンサーサイズの小さなカメラが必要になると思います。
APS-C | フルサイズ | |
---|---|---|
ボケ大 | No Data | |
予想: f/2.0 | f/5.6 | |
ボケ適度 | ||
f/8.0 | f/22 | |
くっきり | No Data | No Data |
最大絞りでもボケ有り | 最大絞りでもボケ有り |
終わりに
如何だったでしょうか?
APS-C機はパンフォーカスでの撮影のやりやすさや、コンパクトな設計に出来るデザイン、そして比較的お手頃な価格というのがメリットになると思います。
フルサイズに比べれば、ボケ量のコントロールは難しいですが、予め何を撮影したいかを考えて、それに合わせて焦点距離と絞りを決めておけば、十分に使いこなすことが可能だと思いました。
「風景をしっかりパンフォーカスで撮りたい」・・・焦点距離は23mm (35mm換算: 35mm)に設定し、f/8.0で撮る。
「背景を活かしつつ、被写体を引き立てたポートレートが撮りたい」・・・焦点距離は57mm (35mm換算: 85mm)に設定し、f/5.6で撮る。
こんな感じです。
余談ですが、今回の評価に使った様なズームレンズを使う時は、ズーム機能で被写体に近づくのではなく、予め焦点距離を決めてから自分の足で被写体に近づく方が良い写真が撮れると思います。
また、自分で撮影イメージを考え、それに合わせて構図や焦点距離、絞りを決めて撮影を行い、撮れた写真が自分の思い描いた通りだった時はとても楽しいです!
この辺の撮り方や楽しみ方については、その内、ご紹介できたらなーと思います。
長くなりましたが、今回はこの辺で!
それでは!